「みんなで幸せになると良いよ。」
『…生まれてこんかったら良かった?』

背筋が凍る。
低い声は感情を伴わず、流れるような音でヒイラギが若い母親の台詞を続けた。


『なぁ、注意もなく殴るんは虐待やと思う。躾ではなくて、虐待。わかる?』


慌てている僕に比べて、ヒイラギは異常なほど落ち着き払っている。


『う、うぅ…。』


母親はしゃがみこんで声を殺して泣いている。
後味が悪いといった感じでヒイラギは母親が視界に入らない方を向いた。
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