「みんなで幸せになると良いよ。」
ママは晩御飯を作りながら背中向けたまま言ったの。


「お母さんいらんねんて。こんな看板娘やめさせたらお客さん来ないよね!」


精一杯ふざけた答えが返ってきたわ。私は悲しくなった。


『絶対お父さんだ。』


小さく呟くと2人はそれ以上話さなかった。
そうだ、私の存在が迷惑なんだって。出て行こうって決めた。
『明日の朝何も言わずに、この家を出よう。』そう心で決めた途端、



「佐紀ちゃん、居ていいんだからね。」



心も頭の中も透明だったように、



すべて見透かされた。





「出て行かれると、娘いなくなっちゃうから。」





涙が出た。



溢れる時間もなく、一筋の液体が顎の横を通過して、



落ちた。
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