「みんなで幸せになると良いよ。」
瞳孔が開いてくのが自分で分かった。首が脈打ってる。


『ママに触るな!相川栄太郎は嘘つきだ!あいつが、あなたたちの上司を買ったんだ!』


「佐紀!来ちゃ駄目!そこに居なさい、佐紀!」


佐紀 ―― その言葉に男達は反応して視線をママから私に向けた。


「相川佐紀さんですね?被害者の相川佐紀さん女性1名保護しました。」


『触るな、触るな、触るな、触るな!』


私は暴れても暴れても警察官の手を煩わせることすらできなかった。


「佐紀―――!!お前、離せって!佐紀!!」

小さい彼は私の手を掴んだ警察官に殴りかかった。空振りになったのを見計らって小さい彼のアゴを殴ろうとした。彼は顔の向きを変えて避けようとしたけど警察官の手が首もとをかすった。時間差でツーっと細い血が流れてくのが見えたわ。


バシッ!


とどめの一発と言わんばかりに彼の後ろ側に居た警察官が首筋を叩いたの。
彼はその場に倒れて嗚咽(おえつ)してた。にやにやした制服の男のひとりが彼の両手の拳を何度も蹴ったり踏んだりした。そのたび彼の悲鳴が聞こえた。


「あなたには拉致・監禁・誘拐・強姦罪が出ています。まぁ、公務執行妨害もですね。」


淡々と男は告げて紙を彼の顔に突きつけた。

自分たちは正義で悪を捕まえた、そんな顔で誇らしげにしてるように見えた。
自分たちに非は全くない…そう片付けられていくんだろうなって思った。
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