「みんなで幸せになると良いよ。」
「けーいーちー!啓知ってるねん、けぇいちやろ?」

前より話せるようになった。

「うん。お兄ちゃんって言うてって言うたのになぁ。」

「言うてへんし、嘘つくなや。」

無邪気、無垢、

あのとき可愛かった啓くんも生意気になっている。

『啓!お兄ちゃんにそんな口利くな!』バシン!と頭を叩いた。

啓くんは口を尖らせて、

「ごぉめん~なぁさぁい~」とふてぶてしく謝る。

『啓くん、椿お姉ちゃんなんか買ったげる。何食べたい?』

椿はしゃがみこんで顔一杯に微笑んだ。

「えっとぉ…千本引きが…したいです。」

啓くんははじめてみる椿に照れている。

野田さんの子供ではない、

きちんと恥じらいのある佐紀ちゃんの息子だ、

そう思うと嬉しくなった。
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