「みんなで幸せになると良いよ。」
僕はなんて言っていいのか分からず、ただ黙っている。

『いずれ捨てられてもいいよ。ただし本気になる前に別れよね。』

「捨てる」その響きに自分のしていることの軽薄さを遅まきながら知る。

人を追い詰めるのに十分過ぎる言葉。

「なんやねん、捨てるって。」

ぼそぼそと愚痴るように言うしょうもない僕。

『じゃぁ結婚?』

彼女は満面の笑みで笑っている。
合わせて愛想笑いをする。

「なんでやねん。」

なんとなくやり過ごしたくて放った言葉は傷つけただろうし、
なんとなくやり過ごされた話題は二度と話題にも上がらなかった。

子供すぎる男と、大人すぎる女。

一対は夜、ふざけながら「実験」をした。
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