「みんなで幸せになると良いよ。」
「告白でもすればいいやん。あの人軽いし、セックスやったらすぐできるやん。」


『別にセックスなんてどうでもいいんよ。』


「なんで野田さんにそこまで魅かれるか分からん。」


名前を聞くだけで苛立たせ、胃液を増幅させる存在。


『野田さんは素敵やん。女子はみんな魅かれてる。』


「あっそ、勝手にして。野田さんに近づきたいなら僕は人選ミスやから。」


冷たく言い払ってその場を後にしたい。歩き出すと左手首を掴まれた。


『待って!!』


さっきまでぶつぶつと聞き取れないような声だったヒイラギが声を荒げる。


『これあたしのアドと番号。今日中に連絡して。お願い。』


同じくらいの身長なのに顎をひいたきれいな顔は上目遣いをしている。つい先日、目を奪った彼女が息づかいの分かる距離で懇願している。ノートの切れ端を受け取るとヒイラギは

『ありがとう。』と呟いていった。

携帯に紙を挟んで折り畳んだ。

カチッと小気味のいい音をヒイラギの背中を見ながら聞いた。

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