「みんなで幸せになると良いよ。」
手持ち無沙汰になってフローリングに寝転んで天井をみつめると、数時間前の『今日中ね。」というヒイラギの言葉を思い出した。

「携帯…携帯…」

昼間渡された携帯のメールアドレスを登録画面に打ち込み、件名と本文には僕の名前だけを入力して送信した。

紙を渡されたときのことを思い出す。ヒイラギから感じた微かな野田臭に僕は嫌悪感を抱き一刻もその場を立ち去りたいという気持ちにさせたこと、上目遣いをした彼女にほんのすこし見惚れてしまったこと、突っぱねることもできた薄っぺらい紙を下心で受け取ったこと。

連絡先を教えてくれたキレイな女性を前に嫌な気にはなれなかった。ましてや、セックスすら何の感動ももたずただの運動と化した僕としては久しぶりの胸の高鳴りに新鮮味を覚えていた。


5分とかからないうちに返信メールが届く。



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