「みんなで幸せになると良いよ。」
バスが発車するのをおばあちゃんも見送って手を振ってくれた。

僕が申し訳なさそうに笑うと、おばぁちゃんも笑顔で親指を立ててふるふるしながら「グーッ!」と渋い顔をしていた。

僕も、椿も、それを見て乗客のすくない車内で爆笑した。

『見た!?見た!?おばぁちゃんがグッドジョブってしてた!』

「ジョブは要らんやん!けど、えぇポーズやったな。」と

膝を叩いて笑った。
ことあるごとに笑い種としてこの話を二人でした。

なにかあると「グッドジョブ!」と震えながら顔をおばあちゃんっぽくして、笑う。
今となれば、幸せだったんだと思うことのひとつになってしまった。

椿には「おばあちゃんは降りそこねた」と本当のことは言っていない。
いいことをする、しようとする椿のままで居てほしいだなんて思ってたりもしたから。

今となれば、僕だけの思い出。
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