神様、俺は妻が心配でならんのです
 真っ暗な画面に、リビングの景色を映した大型テレビ。座る人間のない黒塗りのソファ。それでも食卓には、焼き立てのポーポーが皿に盛られて置かれており、美味しそうな湯気を立てていた。

「そろそろ戻って来るのではないかと思っていたところですよ」

 台所の奥から、妻がそう言ってきた。

「小腹を空かせてはいけませんから、少し作ったの。うまくできているかしら。昔は子供達によく作ってあげていたけど、あなたも好きだったでしょう? さ、お食べになって」

 仲村渠は帰ってくるたびに小腹をすかせていたから、妻は彼が早帰りの日は、いつも何かを用意して待っていた。週に何度かはポーポーやヒラヤーチー、サータァンダギーが作られていたものだ。

(とても懐かしい、匂いだ)

 妻が現れてから、一人で長時間留守にすることなくなっていたから、これが初めてのポーポーではある。

 中に味噌は入っていなくて、ほんの少し砂糖を加えた、彼女の黄色くて美味しい沖縄料理――。
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