神様、俺は妻が心配でならんのです
「あ、ポーポーで大丈夫でした? トンカツソースはいります?」

 夕飯の支度を再開した妻が、ふと振り返り、聞いた。

「いや、ソースはいらない」
「あら珍しい」

 仲村渠は思い出を心の奥へとしまい「ありがとう」と言った。

 途端に妻が嬉しそうに目を細めて「どうかされたんですか」なんて茶化しつつ、作業に戻る。

 仲村渠は妻楊枝を一つ取り、切られているポーポーの一切れに刺し、そして口に入れた。

 巻かれたポーポーの端から食べるのが、仲村渠は好きだった。昔からそうなのだ。焼き目の少し焦げた、カリカリッとした触感が気に入っていた。

 妻が作ってくれたポーポーは、ひどく懐かしい味がした。

 仲村渠は、よく噛んで、その味と触感を深く味わった。

 彼は食卓の椅子に座り、ポーポーがのった皿に向き合い、何度も、何度も噛みしめて、すべていただいた。量があったので胃の心地が悪くなったが、吐いてなるものかと、用意されていたグラスに入った茶をゴクゴクと飲む。
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