神様、俺は妻が心配でならんのです
 ポーポーは、自分で作ろうとしても綺麗には巻けなかったし、膨らまなかった。

 味だって、ここまで美味くはできない。

(――本当は、君の作る料理や菓子が、好きだった)

 全部自分でできると思っていたのに、離れしばらくしてから、自分の作る料理が味気ないものだということに仲村渠は気付かされた。違う料理に挑戦してみしても、食べた時に感じるのはいつも無感想な静けさだ。

 腹を満たすためだけに食べ物を口にする日々は味気なく、しばらくすると食べることへの興味も薄れた。

(よくない顔色、か)

 ちょっとした軽いつまみや、デリバリーで済ませるのもよくあることだった。

 皿一つ分のポーポーはつらかったが、最後は、きちんと「ごちそうさま」と言って両手を合わせて、ティッシュで唇を拭った。

「俺は、もう大丈夫だ」

 仲村渠は立ち上がった際、台所を見て、そう声をかけた。

 窓から風が入り込み、リビングのカーテンが大きく膨らんだ。

「……俺は、もう、大丈夫だから」
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