神様、俺は妻が心配でならんのです
 病院生活は快適だが、残念なのは、数日間絶食しなければならないこと。点滴で受ける睡眠剤が強いために、副作用を起こしてしまうことだった。

 絶食治療の間は、お風呂も制限されるから髪がごわごわになってしまう。

 それが私は少し、辛かった。

『いくつになっても女だもの。少しでも綺麗でいたいと思うのは、いけないことかしら』

 私は面会に来る息子達に、笑ってそう聞かせた。

 私は癌を患ってしまったから、必ず病院へ通わなくてはならなかった。

 一つ一つのお薬も、私の身体には生きるために必要な物だ。

 身体中を流れている血や、呼吸するための酸素と同じで、薬を飲まなければ私はみるみるうちに衰弱し、腹水が醜く膨れ上がって、頭も朦朧として、そして短い間に死んでしまうのだろう。

 唯一の救いは、テレビで見るような抗がん治療がなかったことだ。

 お薬に少し混じっていると、お医者様は言っていた。

 手術はできない状態ということを話し聞かせてくれたお医者様は、そう語っていた時、私に付き添っていた末の息子と同じ顔をしていた。
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