神様、俺は妻が心配でならんのです
 入院する生活が増えていくと、自然と看護師や、同じような入院の常連者と友達になれた。

 ずっと前に夫とは別居しているのと私が言うと、みんな『大変だったのね』と口を揃えて、同情し『一人身の方が気楽よ』と励ましの言葉を口にした。

 別居はしているけれど、私は、まだ彼の妻だ。

 指にはめた結婚指輪を外す気にはなれないでいた。

 息子達は離婚させるといきり立っていたけれど、あの人が判を押さなかったことを、私は少し嬉しくも思っていたのだ。

「私、結婚してよかった。不幸ではなかったのよ」

 私がそう言うと、友人や周りの人達は、少し変な顔をした。

 愛した人と目が合わないことが多くなったり、彼が子供達に辛く当たる時できたり、その仲裁に入ることだって心苦しかった。

 けれど頑張らなきゃいけない時は、どの夫婦にだって必ず訪れる。

 私は、どうやら心が強くなかったらしい。よく涙を流し、彼のために何ができるだろうと胸を痛めた。それがだめなんだと息子は叱りつけるみたいに言った。

『母さんっ、頼むから……!』
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