神様、俺は妻が心配でならんのです
 愛や気持ちは目に見えるものではない。私は彼を信じていたけれど、あの時、今にも壊れそうな顔でそう言って『俺と来て』と言った愛する息子を、長男を選んだのだ。

 子供達には、ずいぶん心配をかけてしまった。

 食事の量が減って、腹水のたまりが早くなったことを感じ始めた頃、激痛と共に吐血して、気付くと病院だった。

 出血の原因を探して、そこを縛ってしまいましょうねとお医者様は言った。

 辛そうな顔だった。なかなか出血場所が探し切れないのだと、息子が教えてくれた。まるで細胞から滲み出すみたいに胃には血が溜まり、昼夜問わず突然嘔吐し、そのたび苦しい時間が続いて、私は意識が深く落ちてしまう。

 そして今回、退院の予定が掴めていなかった。

 二番目の息子と入れ替えで見舞いに来た末の息子が、その日、珍しく夫のことを私に聞いたてきた。つまりは、彼らの父親のことを。

 私は、夫を怨んでいないことを教えてあげた。すると彼は、

「母さんは優し過ぎるよ。だから、損をしてしまうんだ」
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