神様、俺は妻が心配でならんのです
 一番上の息子は強く反対していたけれど、私は、もうずっと前から、夫のことを気にしていた。

 もし最期になるのなら、少しでも会いたいと思った。

 欲を言えば話したかった。

 息子達も知らない、私達だけの記憶を、懐かしく語り合いたかった。

 でも彼に連絡を取ったとして、そこで拒絶されたら、きっと私は立ち直れないような気もした。

 月が明けてすぐ、これまでとは比べ物にならない発作が起きた。苦しみが身体を貫いて、意識が混濁した。何度か目を開けた覚えはあるけれど、私は霞んだ視界の先に、心配した顔の息子達の姿があったような気がしている。

(ああ――)

 私は再び遠ざかっていく意識の中で、なぜかまたしても夫のことを思い出した。

(もしかしたら最期までに会うのは、間に合わないかもしれない)

 そんな残念な気持ちが、私の胸の中いっぱい込み上げる。

 だって、しようがないではないか。

 私は、今でも、最初で最後までもきっと、あの人が好きなのだ。

 意識は、深く昏睡し始めていた。その間夢はあまり見なかった。浅い覚醒は、私を心配する子ども達の姿を見せ、また暗闇へと私を引き込んでしまう。
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