神様、俺は妻が心配でならんのです
 病室に待機してくれている子供達の中に、夫の姿を思わず探してしまうたび、私は悲しみが込み上げるのだ。

 末の息子は、父親に見舞いを提案したと言っていた。

 けれど彼のことだから、会いには来られないだろう。

 なぜか私は、そんな気がした。最初で最後に愛した人だから、彼のことはよく知っている。

(あの人が会いに来られないのなら――私が、あの人に会いに行きたい)

 私は、何度目かも分からない『苦しい』の中でもがきながら、そう思った。

(けれど私は、この身体で、いったいどうしようというのだろう?)

 せめて、彼の夢の中へでも、会いにゆければいいのにと思った。

 もし、彼と今でも、一緒に暮らしていたのなら。

 私は苦しくて勝手に溢れてくる涙の中、あの人はきちんと食べているのかしら、子供達から連絡を受けて心配に思っていないかしら、平気かしら――なんてことが、たくさん、頭の中に沸き起こった。

『――』

 そうしたら、誰かが、私の名前を呼んだ。

 とてもよく知っているようで、知らない複数の温かな〝音〟。

 私は毎朝捧げている祈りの言葉を、思った。

 ああ、神様、守護神様、守護霊様、どうか夫に――。

             ※
< 115 / 120 >

この作品をシェア

pagetop