神様、俺は妻が心配でならんのです
 どうやら昔、城間は東風平という知人に世話になったそうだが、当時関わったらしい詳細については何も語らなかった。仲村渠も今回、説明するのもとても苦労する、いや難しくて結局友人にもうまく語れになかった件があったので、聞き出そうとはしなかった。

 平日の病院には、出入りする人間が多かった。

 午前中だから混んでいないと踏んでいたのだが、仲村渠の見当違いであったようだ。

 表玄関の前には介護用の送迎バスが何度か停まり、外に設置されたベンチには入れ替わり立ち替わり人が座って空きがない。

 今日は、初の見舞いということもあり、仲村渠は清楚に見える一番いいシャツと、皺のないスラックスのズボンを選んだつもりだった。しかし、自分の姿を今一度確認しても、落ち着かない気持ちになる。

 緊張、というよりも、不安の方が大きいのだ。

 末の息子には、見舞いの件について事前に連絡を取っていた。

 何かあれば長男から手厳しい一報が入るはず……身構えていたのだが、なんの知らせもないまま当日が来てしまったのも、仲村渠をどぎきさせている。
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