神様、俺は妻が心配でならんのです
「まあ、それは楽しみですねぇ」

 妻は、口許を手で隠し、ころころと楽しげに笑った。

 仲村渠は経済新聞に挟んでいた別の情報誌を取り出すと、妻に手渡した。

 それは彼女の希望で、一緒に取るようになった文芸専門の、全部で十ページにも満たない情報誌だった。

 彼は文芸情報誌を妻に手渡す際、それとなく表紙に目を走らせた。

(都合よく、なるものなんだな)

 改めて現在、自分が置かれている状況の奇妙さを思った。つい先程見た時と、表記やら数字やらが、違っている。

 こうしていると、まるで夢の中にぼんやりと漂う景色の中に、放り込まれているのではないかとも感じる。

「部屋で少し調べ物をしてくる。九時には出発しよう」

 仲村渠は妻にそう告げ、書斎に戻るとパソコンの電源を立ち上げた。

 インターネットがこんなに役立つ日が来るとは、思ってもいなかった。たくさんの情報を手っ取り早く得られることについては、現代の恵まれた環境に感謝せねばならないだろう。
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