神様、俺は妻が心配でならんのです
(――さて、今日も頑張るか)

 この日も仲村渠は妻を外に誘い、朝の九時までには準備を整え家を出た。

 沖縄本島の北部を目指して北上する。

 妻は、彼が長時間の車の運転を強いられることに気をきかせ、卵とポーク、レタスを挟んだサンドイッチを用意していた。エゴーマヨネーズとケチャップを塗った食パンに、それらの食材は相変わらず相性がよく、運転中にでも気軽に食べられるうえに美味だ。

 途中、仲村渠は行きつけのガソリンスタンドに立ち寄ることも忘れなかった。

 彼は割引券のレシートを提示し、満タンでの給油をお願いした。

 やはり、今日も顔見知りの店主である上原の姿はなかった。店員に聞くと『ちょっと急な用ができて外に出た』とのことだ。

 上原という男は、妻の友人の息子にあたった。妻は残念がった。

「また、次来る際には会えるでしょう」

 彼女は、前向きにそう言った。仲村渠は「そうだな」と答えながら、やはり会えないか……と、この奇妙な現象を思った。

 天候はよく、風も程よく吹いて涼しかった。
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