神様、俺は妻が心配でならんのです
 仲村渠は二つある椅子のうち、奥の席に妻をすすめた。自分は出入り口の近くの椅子に腰かけたのだが、横顔にずっと刺さっている占い師の視線が気になって、仕方がなかった。

「電話先でもご案内させていただきました通り、私の得意とするものは、お客様に今、一番必要とされる天然石のブレスレットを作ること。そしてタロット占いで、悩みごとについてアドバイスを行うことです。交霊や霊視の力はありませんので、大きなことは期待なさらないでください」

 そう、はっきり告げられて驚く。

 けれど――そうしてくれる方がホッと肩の力も抜ける。

「私は、少しでもアドバイスが欲しいと思い、ここを訪ねました。初めてのことで、何をどうやっていいのかさえも分からないのです」

 仲村渠が告げると、女は、あたりを不思議そうに眺める妻の様子を確認した。

「彼女が、奥様ですね」
「はい」
「それでは早速、リーディングを始めます」

 占い師はカードを切り始めた。今回は補助カードを含め、三種類のカードを用意させていただいた、と話す。
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