神様、俺は妻が心配でならんのです
 それは――仲村渠も、実際に経験を踏んでいるところだった。

「そうですね。実際、私も手探りの状態です」

 けれど、でも……と仲村渠は、膝の上の手を握り締める。

「俺が、いえ私が可能性を探すことを諦めては、いけないのです」

 彼女の、ために。

 彼が視線を向けると、占い師も妻の方を見た。壁の竜のイラストを見ていた妻が、ふっと気付いて「こんにちは」と言って彼女に微笑んだ。

「こんにちは」

 占い師の女が、初めて口元で小さく微笑んだ。

 けれど気のせいか、仲村渠にはそれが、何かを察知して少し悲しげに、もしくは同情か心配を交えて浮かべて笑みに思えた。

「では占うことは『今、あなたの知りたいこと、それを解決するための糸口』とします。難しいですが、やってみましょう」
「難しい……」

 仲村渠は、彼女がたびたび口にしているその言葉が気になった。

「試練であっても、神様もヒントぐらいは出してくれるはずです」

 神様――なぜか、こその言葉が頭の中に引っかかった。
< 35 / 120 >

この作品をシェア

pagetop