神様、俺は妻が心配でならんのです
「守護の力が強いのであれば、あなたは導かれ、巡り合うでしょう」
「努力は――してみようと、思っています」

 仲村渠は礼を言い、料金を払って部屋の外へ出た。

 カウンターにいた占い師と同じ顔をした女性店員が、可愛らしく微笑んで、「娘さんのプレゼントにいかがですか」とブレスレッドの並んだ棚の一つを指してきた。

「厄を払ってくれるそうです。首里から入荷している水晶なのですけれど、こちらでストラップにアレンジさせてもらっている物もありますよ」

 小さな透明ビーズの間に、見慣れた数珠よりも小さな水晶と、四方にピンクの飾りが並んだブレスレットだった。料金も安い方だ。ストラップに関しても女性が好みそうな可愛らしいデザインが複数並んでいる。

(娘、か)

 そう思いながら、仲村渠はあまり気が進まなかった。

 こういう代物への知識はない。迷信や信仰は大事にするものの、こういった信仰グッズが売買されることについては、あまりいい見解は持っていなかった。

 妻は、自分の生まれ年の十二支の絵が彫られた水晶のブレスレットを見ていた。

 気に入ったのか、彼女がその一つを手に取ると、楽しそうに微笑んで仲村渠の分も探して持ってきた。

「せっかくだから、買いましょうよ」
「ふふっ――そうだな」

 妻の楽しそうな笑顔に負けた、というやつだろう。

 仲村渠は気持ちもガラッとかわってしまって、穏やかな気持ちでそれを女性店員に頼み、二つのブレスレットを購入した。

 その場で、二人の腕にブレスレットをはめた。

 妻が選んだのは、女物のブレスレットだったので彼は少々照れ臭くなったが、笑う妻の顔を見ていると、やはり『まあいいか』と思えた。

「信じれば、どんな物でも御守りになりえますよ。値段の高さで、守る相手を選ぶ神様なんてこの世にはきっといませんもの」

 妻との会話から迷信深くないと分かったのか、女性店員が柔らかな微笑でそう言った。
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