神様、俺は妻が心配でならんのです
 そこは美味しいステーキが食べられる専門店で、セットでついてくる珈琲もとてもうまい店だったが、そこで販売されているミニパイも有名だった。

 仲村渠はその店で数種類のミニパイと、イルカ形のクッキーを十枚購入した。

 到着したのは正午近くだ。ステーキが美味いと人気の飲食店だったので、すでに仲村渠が来た時間は、待ち人がたくさん並んでいるほど混雑していた。観光客も多く、日本人、そして中国人も一部いた。

 彼は、店頭に並んでいる菓子を購入しながら、美味そうな珈琲と肉を焼く匂いを嗅いだ。

「ふふ、機会があれば、今度来た時にでも食べましょ」

 妻はそう言って、笑っていた。

 二人は菓子だけを購入すると、休憩がてら店の裏手にある海を眺めながら菓子を食った。

 正午前、まだ午前中の海は、ひどく澄んでいた。淡いサファイヤやエメラルドグリーンが目に眩しい。

 潮風の心地よさに髪や衣服をはためかせながら、仲村渠は娘のように「綺麗ねぇ」とはしゃぐ妻を見守った。
< 42 / 120 >

この作品をシェア

pagetop