神様、俺は妻が心配でならんのです
 けれど、せっかくここまで来たのだからと、仲村渠はドライブだと思っている妻に、まさにそうしてやろうと考え、今度は名護の巨大なガジュマルの木を見せることにした。

 車を市街に進めると、道路の中央に巨大なガジュマルの木があった。

「まぁっ、すごい! とても大きなガジュマルねぇ」

 何度か妻に見せたことはあったはずだが、彼女は初めて見たみたいにとても喜んでくれた。

 何百年と生きたガジュマルの木には、神様や精霊や、もしかしたらキジムナーが宿っているのかもしれない。

 仲村渠は運転中だったから、道路の真ん中に鎮座するガジュマルを眺めたのは、ほんの数十秒の間だったが、それでも長寿の木には神妙な気持ちを覚えた。ここ一週間で凝り固まっていた疲れが軽くなり、やる気が胸に蘇るような気がした。

 しかし同時に、いつまでも二人のいる穏やかな生活を望んではいけないのだろうとは、彼にも分かっていた。

(どうしたら――)

 それが、分からない。動きたいのに、どうしていいのか分からないのだ。
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