神様、俺は妻が心配でならんのです
「あら、あなた、ミルク入り珈琲を買ったんですか?」

 珍しい、と妻が口許に手を当てた。

 彼は「うっ」と言葉が詰まる。

「俺はだな、その、胃のことを考えて……それよりも、どうしてカメラなんて買ったんだ?」

 妻がカメラを買うというのは、仲村渠には予想外のことだった。

 すると彼女が「変かしら?」と小首を傾げたので、彼は「いや、いや、いや」と慌てて取り繕った。

「別に変じゃない、変ではないぞ。ただな、写真に残しておきたいことなんて、あったかなと少し思ってしまっただけで。そんなに深い意味はないんだ」
「どうしてあなたが焦っているんです?」

 妻は、ふふっと楽しそうに笑った。

「だって、あなたとこうして時間を気にせずにドライブできるなんて、あの頃以来だから、私、本当に嬉しいんですよ。ついつい写真が欲しいと思ったものですから」

 彼は悩み、少し考えた。

 はたして〝カメラに残るのだろうか〟と――。

 そう仲村渠が運転席で悩んでいる間にも、妻は袋を破り、中から使い捨てカメラを取り出して説明書に目を通していた。
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