神様、俺は妻が心配でならんのです
「ほら、まずは始めの一枚を撮ってみましょう」
「えっ、今か? ここでかっ?」
「ほらほら、もっとこちらへ寄ってくださいな」

 戸惑っている間にも腕を引かれ、気付けばパシャリとフラッシュが光っていた。

 妻は外が明るいというのに、どうやら見よう見真似でフラッシュの設定ボタンを押していたらしい。

 一瞬、二人の顔に眩い光が差し、仲村渠は「うわッ」と声を上げ、妻が「あらまっ、目を閉じてしまったわ」などと大きめの声を上げ、それから可笑しかったみたいに声を上げて笑った。

「やっぱり、自分で撮るのは難しいわねぇ」

 仲村渠は、しばし妻を見つめた。

「お前、ずいぶん明るくなったんだな」

 そう感慨深く呟くと、彼女は不思議そうに夫の視線を受けとめた。

「あなたはなんだか、私のお父様に似てきたみたいよ。血は繋がっていないのに、不思議ねぇ。ほら、その眉間の皺、そっくりですよ」
「まぁお互い歳は取るもんだからな。お前がそう言うのなら、俺はお義父さんに似てきているのだろうな。これからもっと似るに違いない。それならお前は、お義母さんに似るんだろうな。あの人も、おっとりとした人だった」

 仲村渠は、言葉を噛みしめた。
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