神様、俺は妻が心配でならんのです
 車内で沖縄の旅行誌を広げ、しばらく話し合ったあと、仲村渠はさらに北上することを決めた。

 本部町の海岸沿いを真っすぐ走り、どこまでも続くように思われる国道を進んだ。

 青い空を映した深い海は、長い間妻の目を飽きさせなかった。時々、頭上を通過する雲の影が、右手にある連なる山々に映って、走り去っていくのが見えた。

 瀬底大橋を通り過ぎ、細くなった侘しい道に差しかかると、車の数は一気に少なくなった。

 途中、そば屋を見掛けたが、そんなに腹は減っていないということで、通り過ぎることにした。

 後ろから急かすレンタカーに道を譲りながら、二人はのんびりとドライブを楽しむ。

「天気がいいのですから、古宇利島へ行きましょ」

 妻が提案した。楽しげにカメラを用意する彼女に「いいよ」と頷き返し、仲村渠はそちらへ車を進めた。

 時間も気にすることのない穏やかな時間が、彼には歯痒いほど眩しかった。

 古宇利島へ行くには、もう一つの島を渡る必要があった。
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