神様、俺は妻が心配でならんのです
 低い土地、そこから繋がっている海を茂った木々の向こうに見た。どうやら新しい大きな道が山の上にかかっているらしいと知ったのは、妻が情報誌を広げて眺めている、この時のことであった。

「なんだ、通りで車が少ないと思った」
「ふふ、また、今度」
「――ああ、また、今度」

 必ず連れていってやるから、と仲村渠は穏やかな声で、そして確かに守るという信念を静かに秘めた声で、そう答えた。

 小さな島を抜け、古宇利島大橋に差しかかると、観光客らしき車が増えてあたりは急に賑やかになってきた。

 正面には大橋、その左右に開けた全ての色が、眼下に飛び込んでくてくる様子には心が高ぶった。

 古宇利島大橋の両側に広がる海は、海底の砂も見えるほどに澄んだエメラルドグリーンだ。その色合いは、まるで海中から不思議な力が放たれているみたいに美しい。

 神秘的な色彩を放つ海に囲まれた島は、神の島のように思えた。

(昔から、変わらないなぁ)

 昔は道も、橋も、橋に行くまでの左右の小高い緑だって、こんなには綺麗ではなかったけれど、と仲村渠は思う。
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