神様、俺は妻が心配でならんのです
 古宇利島大橋には、橋の途中で車を止めて写真を撮る者や、歩いている観光客の姿もあった。

 何度来ても、仲村渠も視界に収まらない美しい海と大橋と島野光景には、目を奪われる。

 感嘆の息をつく仲村渠の隣で、妻が窓を空けてカメラのシャッターを切った。

 彼女がカメラに収めたいと思う気持ちも、仲村渠はよく分かった。先を走る車も、後を走る車も、自然とスピードを落としてしまうほど美しい光景だ。

「少し、停めようか」

 仲村渠が隣の妻にそう声をかると、彼女はやんわりと断った。

「いいの。このまま、走って」

 彼女はそう言うと、窓の方を向いたままカメラを構え直して、今度は自分と夫のツーショット写真を撮った。すでにフラッシュ設定は解除されていて、シャッターを切る音を、仲村渠は運転するのを横目に聞いていた。

 古宇利島は、車で簡単に一周できてしまう小さな島だ。

 大橋から続く道にそのまま車を進めると、途中観光客やドライブを楽しむ人向けに、小さな飲食店が点在している。
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