神様、俺は妻が心配でならんのです
 民家はすくなく、自然が多い。

 道の途中、小さな畑で仔馬が呑気な顔をして草を食っていた。

 先に走っていた黒い普通乗用車が、路肩に停車してスマホで写真撮影を行っている。

 仲村渠も妻のために、路肩に車を寄せて停車した。

「あらあら、うふふ、可愛い仔馬ねぇ」

 妻は使い捨てカメラを構えると、パシャリと記念撮影をしていた。仔馬は人に慣れているのか、動じる気配はなかった。

 高台にいくに従って、民家も少なくなり、手入れのされていない畑が増えて道幅も狭くなっていく。

 荒地にぽっかりと開けた砂利の広場と、一軒の喫茶店があったので、仲村渠はそこで休憩するべく車を入れてみた。

 一番高台にある店には違いないだろう。

 そこから、古宇利島の光景を妻とゆっくり眺めてみたいと思った。

 砂利の駐車場を持った喫茶店は、木造家屋の二階建てだった。細い木造階段の前には手製の看板が立ててある。たぶん営業中だろう。

 車を降りてすぐ、仲村渠は思わず天を仰いだ。
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