神様、俺は妻が心配でならんのです
「はぁ、なるほど……」

 ようするに、余暇を楽しみつつ、ついでに仕事の用を済ませようとしているのだろう。

 理解は要らぬ会話なのだから、そのへんはあまり気にしなくてもいいだろうと、仲村渠は思った。

「私も、まぁドライブがてら、といったところです」

 仲村渠も社交辞令程度にそう述べた。

 しかし、ふと、なぜだか新たな質問が彼の口をついて出た。

「あの、――もしも、理屈も科学も通じないことが起こったとしたら、私達はいったい、誰に助けを求めればよいのでしょうか」
「ふむ? 奇異なことを聞く人ですねぇ」

 男は控えめに笑ったが、まるで質問が来ることをわかっていたかのように落ち着いていた。

 仲村渠も不思議だつた。つい、自分の口に手をやる。だが訝って顔を顰めている間にも、男がずいっと顔を近づけてきて「ズバリですね」と言った。

「神様です」
「はぁ……神様、ですか」

 ビクッとした直後、仲村渠は狐が笑うみたいににーっこりと目を細め、人差し指を立てた彼を前に、なんだか拍子抜けした。
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