神様、俺は妻が心配でならんのです
「そう、最後の神頼みってやつですよ」

 冗談口調で言ってのけると、男は愉快そうに笑う。

 やはりジョークの類だったのだろうか。三十代くらいだとすると、仲村渠よりもずいぶん年齢差があるものだから、彼は受け答えに戸惑った。

 そもそも『神頼み』では、なんの解決にもならない。

(俺には、神様は見えないのだから)

 すると仲村渠を見て、男も拍子抜けしたように笑顔を引っ込めた。

 男は、ぽかんと間の抜けた顔をすると、何かに気付いたようで椅子に座ったまま身体を仲村渠へと向け「すみませんでした」と頭を下げ、詫びた。

「本気の質問だったんですね。不躾に返してしまって、ほんま、すみません」
「いえっ、別に――」
「神様に頼むことは何も間違っていませんが、そもそも神様自身では助けることができません。物質世界で異界に関する問題を抱えてしまったのなら、その神様たちに通じる人間達に、あなたは助けを求めればいいのですよ」

 それは、当初から仲村渠も知っていたことだった。だから彼は、ユタを、占い師を、霊能者を探しているのだ。
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