神様、俺は妻が心配でならんのです
 仲村渠は、心底困っていた。

 どうしてこんなことが起こってしまっているのか、分からない。

 分からないことだらけだ。いったい、どこに助けを求めればいい?話しても信じてもらえない、という恐れもあって、語るに語れないという事情もある。

「他に、どなたかに相談はされたのですか?」

 狐に似た顔をした男が、小首を傾げてそう聞いてきた。困っているのか呆れているのか、まるで読みとれない表情だ。

 仲村渠は、少し考えてから、協力者の存在を明かすことにした。

「一人だけ、話を打ち明けた友人がおりまして、少し協力してもらっています」
「ではあなたの友人は、あなたがユタ探しを始めた事情も知っているんですか? どうして彼に話そうと思ったのか聞いても?」
「実は息子に連絡を取って一蹴されたあと、ふと〝電話なら彼とも話しができるはずだと思い至ったから〟です。実際、息子には電話は繋がりましたからね。それなら、彼にも連絡がつくのではないか、と。彼は誰よりも付き合いの古い友人でしたし、私と妻のこともよく知っている男でしたから」

 仲村渠も努力はしたつもりだった。電話越しでは不便もあるので、一度会ってみようと二人は行動に移していた。

 けれど、どんなに試しても、仲村渠と友人が顔を合わせることはできなかった。

 友人には仲村渠が、仲村渠には友人の〝存在が確認できず〟とうとう出会えなかったのである。
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