神様、俺は妻が心配でならんのです
「ほぉ。会えない、ねぇ――」

 深い事情を何も知らないでいる男が「ふうむ」と呟き、両手を再び着流しの袖へ入れた。予定の時刻でもあるのか、彼は数十秒考え込んだあと、一度外へ目をやって「うーむ」と顎の下をさすった。

「事情はよくわかりませんが、どうしてユタ探しを必死になってされているのか、よろしければ事情の方をお伺いしても?」

 男はすぐに「無理にとはいいませんよ」と続け、労うみたいに眉尻を下げて微笑んだ。

「ただ、沖縄にも悪徳商法だってもちろんあるでしょう。へたしたら、お金だけが巻き上げられてしまうケースだってありますから。深い事情がないのでしたら、あまりユタには頼らない方をおすすめしますが」

 男は、どうやら見知らぬ仲村渠を心配してくれているらしい。

 確かに、本物を探しながら訪ねていくことについては、どうしても費用がかかってしまうという事実はあった。

 しかし、お金の問題ではないのだと仲村渠は拳を握りしめた。
< 63 / 120 >

この作品をシェア

pagetop