神様、俺は妻が心配でならんのです
 珍しく二人、遅い朝食となった。

(俺が起きた時間に、妻も同じように台所に立っているのも奇妙な感じだが……)

 まるで、決まっていた日常の繰り返しだ。

 仲村渠は、早く名刺先に連絡を取ってみたい気持ちがあったものの、理由の分からない迷いが彼の行動力を制限した。そして結局、その日は電話をかける、という行動にはでられなかった。

 明日こそは連絡を取ろうと予定を立て、彼は一度眠った。

 よく眠れないまま、翌日の土曜日を迎える。

 仲村渠は起きて早々、消化不良のような重りを腹に感じた。

 緊張していたのだ。名前も分からない、住所も不明の電話先に連絡を取ることに、とてつもなく緊張している。

 妻との食事中も、電話を掛けるタイミングばかりを考えていた。

 けれどとうとう朝食時間も終わってしまう。

(――よし)

 仲村渠は腹をくくり、すぐに書斎へと向かった。

 室内で一人、名詞に書かれている電話番号と睨み合う。そして深呼吸をしてから、何度も電話番号を確認しながらスマホのタッチ画面を触った。
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