神様、俺は妻が心配でならんのです
『そういえば先日お話した件なのですが、何か進展はありました? 連絡をくださったということは、こちらで話しを聞いてみることにしたのかなぁ、と思ったのですが』
「そういう、ことになりますね……昨日は、調べ物だけで終わってしまいましたから」

 電話越しで、男が『ふむふむ』呟く声が聞こえた。

『実はですね、先日、僕から彼にそれとなく話をしてみたのですよ。まあ、彼は何かと忙しい男ですし、気難しいうえに気まぐれです。どうだろうなあとは思っていたのですが、まあこれがまた驚くことに、専門家としてやっている訳ではないが話しは聞いてやってもいい、とのことでしたよ。今日の午前中に時間は取ってあるそうですし、昨日の時点で茶菓子の予約も三人分されています。気兼ねなくいらっしゃってください』
「時間を取ってあるって……茶菓子まで? まるで私が今日、連絡を入れることが分かっていたみたいじゃないですか」
『あははははは、不審がらないでくださいな。僕はあなたから連絡が来ると〝先視〟していましたし、彼は僕から話を聞いて、あなたが来るという未来を〝聴かされた〟んでしょう。目と耳で前触れをされた、つまりこれも何かの縁でしょう」

 仲村渠は、男の返答が理解し難かった。
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