神様、俺は妻が心配でならんのです
 そもそも『祓えるものなら祓ってみろよ』と挑発的に思った。

(本当に祓って〝害を与えたり〟するようであれば、その時は、俺がお前の顔面に鉄拳を飛ばしてやるからな)

 とはいえ、この男がそのへんに関してまったく信用ならないのは確信している。

 きっと、巫女服を着た中年太りの面白男は、確かに、さぞ女子高生のお喋りにもってこいの話題に違いない。

 するとユタを名乗るその男が「よくぞ聞いてくれましたね」ともったいぶった前置きをしてから、奇妙な指の差し方で、仲村渠にビシリと指を突き向けて、断言した。

「奥さんに取りついている悪い霊がいます!」

 仲村渠は、その回答を聞いて、完全にあてになにないと判断した。

 ユタは続けて「大変だ、大変なんだ」と言いながら、シーサーの置物をむんずと掴むと、高く掲げた。続いて拍子のずれた音を踏みながら何事かを唱えつつ、部屋をぐるぐると回り始める。

 ユタのヘタクソな盆踊りを、何も知らない妻だけが楽しんでいた。

 少女のような笑い声と、中年のおっさんのはしゃぎっぷりがを聞きながら、仲村渠はとうとう頭を抱え、まずはどうやってこの場から逃げようかと考えた。

              一
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