神様、俺は妻が心配でならんのです
 砂利道の傾斜は急だった。舗装が悪い獣道が、車をガタガタと鳴らせた。

 車一台がようやく通れる道だったが、対向車が来るだとか、人が歩いているという心配事には発展しなかった。

 道を抜けると、車が五台以上も停められそうな砂利の駐車場が広がっていた。そこには、一軒の長い民家が佇んでいる。

 木製の古い門の上には『電工』と記載のある看板が掛かっていた。

 仲村渠は、先に停まっていた白いバンの隣に、自分の乗用車を停めた。

 太陽はまだ天辺まで昇っていなかったが、日差しは肌を焼くように暑い。敷地の周りには雑草や木々が雑踏としており、ここが山の上なのだと改めて感じさせられる。やや強い風には、海の匂いも混じっていた。

 門の出入り口には扉はなく、石垣で囲まれた塀の中は雑草が茂った庭と池、引き戸式の玄関があった。

 玄関はすでに開かれており、着流し姿のあの男が仲村渠を出迎えた。

「お久しぶりですねぇ。改めて紹介させていただきます。僕は、ミムラと申します」
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