神様、俺は妻が心配でならんのです
「はぁ、ナカンダカリです」
「ナカンダカリさんですか。ふむふむ、成程。これから会っていただく僕の友人の名前は、コチンダといいます。彼の方はお仕事がもう少しかかるそうなので、先に客間へどうぞ」

 家主は、東風平というらしい。

 仲村渠は頷き、名乗ったミムラという男の後ろをついて家に上がった。

 東風平家は、昔の平屋敷造りで広かった。玄関から南側は仕事用の工場となっていて、北側は住居用だ。

 案内された縁側の細い廊下に沿って、襖で閉ざされたいくつかの部屋を通り過ぎる。

 廊下の半ばで、ミムラは足を止めると、畳み間に仲村渠を迎え入れた。

 客間は、縁側に広がっている庭が一望できた。背丈の短い雑草が自由に成長を続けている。高さはまばらで、成長が早い種類の雑草に関しては、他の緑の中から花頭や葉っぱを突き上げて風に揺られていた。

 どうやら家主は、庭の手入れには興味がないらしい。

 奥でどっしりと腰を降ろしている桜の木だけが、青々と葉を茂らせていた。
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