神様、俺は妻が心配でならんのです
「向こう側に、池がありましたでしょう? いちおう鯉や亀なんかがいるんですけども、まあ濁ってあまり確認しづらいというか。それでも彼は、どうやらあの厳つい顔で、一人池の住人達を可愛がっているようでしてねぇ。この前、池を覗き込んでいると、スッポンが飛び出してきて僕は危うく噛みつかれるところだったのですが、かえって私が怒られてしまった、みたいな?」
「いや、私に聞かれても分からないんだが……」
「まあ、そうですよねぇ」

 ミムラはお喋りなのか、一人話で盛り上がりながら喉でころころと笑った。

「僕的には『なんで池からスッポンが出てくるんだ』と思いましたよ。けれど、彼に言わせれば『驚かすな』とそっけない一言。けれどね、昨日なんて、鯉に餌をあげているとすごくぶさいくでデカい金魚が飛び跳ねてきて、驚きました。彼の家の池は、ミステリアスな池に仕上がってますよ」

 結局のところ、家主は細かいことに無頓着な性格――なのだろう。
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