神様、俺は妻が心配でならんのです
「事情はいくらかは聞いています。まず、始めに言っておかねばならないことは、私がその手のことを専門にしている者ではない、ということです。隣にいるこいつとは違って、属する寺も、流派も、師もありません」

 それでもよろしいですか、と彼は続けて尋ねてきた。

「は、はい。もちろんです」

 仲村渠は了承を示すため、さらに大きく頷いても見せた。

 すると東風平が、仲村渠の焦燥し切った顔色を見て、ふっと眉間の厳しい雰囲気を緩めた。

「心配せずとも大丈夫だ。あなたは、何も間違えてはいない」
「え……」
「すべては今、この現実で起こっていることであり、あなたの判断は正しいのです」

 東風平は、比較的静かな口調でそう告げてきた。感情の読めない鋭い眼差しは、先程から仲村渠を見据えたままだ。

 仲村渠はなぜか、どっと緊張が抜けるような心地に襲われた。

 その直後、ようやく巡り合えたのだろうかという期待と、不安が胸の鼓動を速くした。手と唇が震えそうになるのをこらえ、聞く。
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