神様、俺は妻が心配でならんのです
「あなたには……私達の身に起こっている不可思議な現象が、すでに見えていたりするのですか? そんなこと、本当に在りうるのでしょうか」
「あなたに起こっている、いえ、正確に言えばあなたの妻に起こっている現象については、高位の守護霊・守護神・先祖霊には可能だ、とは聞いたことがあります」

 東風平は、唇を薄く開く。

「あなたはこの現象が発生してからは、知人とも会えなかったはずです。あなたの目には映らず、彼らからも、あなたたちの姿は映ることがないという不可思議な現象だ」
「時間や空間において、何かしらの相違が発生するんやろうなぁ」

 自称『ミムラ』が補足した。彼は、着流しの袖から白い手を出して、手振りで説明を交えながら、言う。

「その微妙なズレや違和感を防ぐために、第三者の記憶や違和感も修正されてしまう、と。かなりでたらめな現象ですが、まぁ、在り得ない話じゃないと思います」

 少し海の向こうの訛りが入った調子で、彼はそう語った。
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