神様、俺は妻が心配でならんのです
 そういえば一緒に暮らしていた時代もあったなと、時々思い出すばかりで、すべては終わった過去の話となっていた。

(離婚届けに、判を押してやろう)

 そう思ったのだが、その時はすでに五年の絶縁状態だった。仲村渠は生憎、息子達の連絡先も知らないでいた。

 一人暮らしが始まって七年が経った頃、仲村渠は結婚していた思い出が残っていた家と土地を売り、老後に暮らす家として那覇新都心に新しい一軒家を建てた。そうしてそこで、満期退職を迎える。

 その後も、彼の一日のサイクルは変わらなかった。

 朝は珈琲の香りから始まり、夜は少しの酒を楽しみながらテレビを眺め、早めに就寝する日々が続く。

 生活は穏やかなものだった。一人だから静か、と言えばいいのか。

 家庭菜園に興味はなかったが、庭はあったのでトマトやピーマン、ゴーヤーを育ててみた。

 仕事をしていた頃より読書の時間が増えたことは嬉しく、気が向けば私立図書館へも足を運んだ。
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