神様、俺は妻が心配でならんのです
 それでも、愛しているよ、とは仲村渠は言ってやれなかったのだ。

 今でもずっと好きだ。世界中の誰よりも、俺は君の事を大好きなんだ。もし叶うのなら、時を戻して、あの頃の姿で君と向き合って――今、伝えられるだけの感謝と、愛の言葉を口にするのに。

 仲村渠は、彼女が大切だった。

 自分の感情よりも、もっと大切な存在であることに気付けた。だから、――。

 今の状況は、常識では考えられないことであり、早く解決してあげなければならないだろうと思った。

 病院では、子ども達が、母親と残された短い時間を少しでも多く過ごせるよう、彼女の目覚めを待っている。

(――俺は、なんて贅沢な男なんだろう)

 こうして、もう一度、君と過ごせるだけで幸せ……なのだろう。

 そう、思わなければならない。仲村渠は、だから考えた。彼女を、きちんとあるべき所へ帰してあげるには、どうすればいいのか。

 そうして今日までの十日、仲村渠は、自分達を助けしてくれる人間をずっと探し続けていたのだ。
< 93 / 120 >

この作品をシェア

pagetop