神様、俺は妻が心配でならんのです
 東風平はそこで一度口を閉ざし、顎に手をやった。まるで、どれから語ったらいいだろうと悩んでいるようにも見えた。

「実は、あなた方二人を〝視た〟こいつの話しによると」

 と言いながら、東風平は顎先でミムラを指す。

「二人とも強い守護の力を受けていて、とても異界の問題を抱えているようには見えなかったそうです。ここまで強い影響力を放っている場合、かなり霊格の高い厄介な霊症の場合が多いのですが、この屋敷に掛けている結界にも、難なく迎え入れられている事実からすると」

 そこで東風平は言葉を切り、仲村渠の頭部のやや上あたりに、じっと視線を注いだ。

「――ああ、やはり、此度の件については、どうやら〝彼ら〟の取り計らいのようですね。かなり強い守護霊と、守護神、ご先祖様の力もあるみたいです。私は視えるわけではないので聴こえる言葉を受けて、私なりの返答しかできませんが」
「彼らの、取り計らい……」

 仲村渠は、その言葉を口の中で繰り返すしかできなかった。理解し難い言葉をつらつらと並べたてられても、疑問が増すばかりだ。
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