神様、俺は妻が心配でならんのです
 東風平が、困惑する仲村渠に続けて説明する。

「病院のベッドの上で奥様は、自分が敬う神様と守護神、そして、ご先祖様に願ったのでしょう。やりとりについてまでは知りようがありませんが、そうである、との肯定が〝聴こえ〟ます」
「で、ですが……」

 仲村渠は、自分と妻の現実での関係を思えば納得は難しかった。

 話を聞いていたミムラを見てみるが――きょとーん、とした狐みたいな顔は、正直、何を考えているのかまったく読めない。

「妻が、そう願って、今の状況になっている、と?」

 慎重に聞くと、ミムラと東風平がすぐ同時に頷く。

「そうに決まってますやん」
「そうですよ」
「し、しかし……神様や守護霊にしても、この、今起こっている状況は、現実では起こってはならない気がするのです」
「そうですね。無茶苦茶ではあります。私もここまでの現象を見たことはない」

 東風平は腕を組み、認める。

「彼女を元に戻すことはできますよ」

 あっり、彼の口からそんな言葉が飛び出して、仲村渠は驚く。

「ほ、本当ですか!?」
「あなた次第では」

 思わず腰を上げた仲村渠は、東風平に「まあ、座りなさい」と手で促され、そろりそろりと腰を戻す。
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