神様、俺は妻が心配でならんのです
「けれど、この状態のままであれば奥様の身体の方は容体が安定し続けるでしょう」
「え」
「神様とご先祖様が、彼女の魂が戻るまで身体の方を守ってくれていますから、離れている間に容体が崩れることはないのです。神様は本来、現世に強くかかわることができないものですから、自分達が魂を話している間に何か起こってはいけないと、まぁ、何かしら裏技を使ってこの世でよく知られている魂の法則を、ちょいっと変更します」
「そんなことって……」
「これも『あり得ない話』です。ですが私の式神達も、まさにそのようなことになっていると口を揃て言っています」

 仲村渠は「式神……?」と首を捻ってしまう。

 だが、東風平が何を言いたいのかは、少しだけ分かった気がした。

 つまり、今の状態であるから、妻の身体は何も苦しいことが起こらずに済んでいるのだ。数日に一回の吐血も、血便も、薬の急激な副作用による記憶の混乱も……。

 原因の分からない深い眠りだと、医者は末の息子に言っていたらしい。

 城間からも『すっと変化なし』と報告が着ている。それは、目覚めないだけで、容体はすこぶる引き続き安定している、という意味だ。

 ――けれど病気をなかったことにしてやれる奇跡など、起こせはしない。
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