学生寮
「みのり?」


耳に心地良いリョウさんの低い声に背後から呼びかけられ、我に返った。


慌てて、涙をぬぐった。


「どうした?」


隣に寄り添ったリョウさんの心配そうな声。


ぬぐってもぬぐっても止まらない涙に、私は声を発することができなかった。


「どこが具合悪い?」


私の肩に手をかけ気遣ってくれるリョウさんに首を振り、私は何とか声を絞り出した。


「海が……」


「海?」


リョウさんは目の前に広がる海を見た。


私はやっとのことで涙を止め、少しずつ、今感じたことを話し始めた。

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