学生寮
ない!


着てきたはずの浴衣がなかった。


カゴの中にはバスタオルと下着と化粧品の入ったポーチしかない。


さほど広くもない脱衣場を見回しても、どこにも落ちていなかった。


私達が入ってからは誰も入ってこなかったから、誰かが間違えて着ていったはずもない。


裕子も探してくれたけど、やはりどこにもなかった。


「しょうがないから、私が先に着替えて宿の人に新しい浴衣をもらってくるよ」


裕子がそう言ってくれ、手早く着替えを済ませ出て行った。


バスタオルを体に巻いてドライヤーで髪を乾かしていると、裕子が新しい浴衣を持って戻ってきてくれた。


事なきを得たけれど、どうにも腑に落ちなかった。


どこ行っちゃったんだろ、私が着てきた浴衣……

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