学生寮
汁物ではないからたいした被害はないけれど、莉絵ちゃんのスカート、ブランド物って言ってたよね。

「ああっ、ごめんね、私がちゃんと受け取らなかったから。
大丈夫?」

私は落ちたお刺身を拾いながら、自分のおしぼりを莉絵ちゃんに差し出した。

しかし、莉絵ちゃんはそれを無視してリョウさんに声をかけた。

「リョウ兄ちゃん、ぬれちゃったぁ。おしぼり貸して」

リョウさんはおしぼりを渡しながら言った。

「洋服、着替えなくて大丈夫か?」

「別に大丈夫。
こんなの、どうせ普段着だし」

莉絵ちゃんはそう言って笑った。

それを聞いた時、私と莉絵ちゃんのそばに来て片付けを手伝ってくれていた裕子が手を止めて、莉絵ちゃんの顔をチラッと見た。

何か言いたげな裕子に、私は目配せした。

なんとなく今は裕子に何も言わせない方がいいような気がした。

私の合図に気づいた裕子は、何も言わずに席に戻ってくれた。

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